Q1
手塚えりかさん、「工房からの風」にどのような作品を出品なさいますか?
A1
硝子の器や装身具を出品致します。
主にパート・ド・ヴェール、またはキルンキャストと呼ばれる、硝子の鋳造技法で制作しています。
粘土で作った原型から石膏で鋳型を作り、ガラスの粒や粉を詰めて鋳造するというやり方です。
「生活の道具」という枠を超えて、誰かの感受性に触れられるような、そんな作品を作りたいと思っています。
Q2
手塚さんご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
「窓からの眺め」を選びました。
私の工房は、実家の一室を間借りしています。
かつて祖父の台所兼ダイニングだったところで、祖父が亡くなった後は、母が洋裁のアトリエにし、
その後、病気になった母の寝室としても使っていた場所です。
そういった家族の歴史や思い出が至る所に沁みついた、古いけれど愛着のある小さな部屋で、所狭しと機材や道具を置いて制作しています。
物に溢れて圧迫感があるので、一番多く居る作業台は、解放感を得るために、常に庭が見えるように、窓に向けて設置しています。
のびのびと育った庭の緑や、差し込む光は、清々しい生命力で溢れていて、緊張感のある作業の合間に、すっと透き通るような、ほっと暖かくなるような、そんな気持ちにしてくれます。
Q3
手塚さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。
A3
初めてガラスで何か物を作ったのは、大学一年の時です。
母校である女子美術大学付属高校から同大学への進学の際、ガラスコースのある工芸科を選びました。
その頃は、恥ずかしながら、将来のプランなど皆無で、
「ただ綺麗だから。楽しそうだから」という理由でガラスを選びました。
そんな風に、若さ故に、何のしがらみも知識もなく、感性と直感だけで選んだことが、実は良かったのかもしれません。
家族から「熱しやすく冷めやすい」と言われる私の性格ですが、ガラスという種火だけは、長く灯り続けています。
ガラスに携わって早17年。
これからも、灯し続けていきた いです。
手塚えりかさんと初めてミーティングをしたのは1月のこと。
作品と作家の表情がとてもシンクロしていて、愛らしく華やかな作家との出会いでした。
それでも手塚さん自身は、ここからの展開をどのようにすべきかと、
開けるべき扉の前にかかる雲を伺いながら、立ちすくんでいるような印象でした。
可愛らしい装身具のほかに、器にも展開を進めたい気持ちを感じ取って、そのことについてお話を深めました。
その後、硝子作家の繁忙期でもある夏の展覧会シーズンを走りながら、器の制作も深められたことと思います。
ちょうど今日、自由学園明日館での催事で、その片鱗を手に取ることが出来ました。
初日で居合わせた硝子作家の津田清和さんが、手塚さんの作品をたいそう褒めていたのが印象的でした。
津田さん、超正直で、直球なので!
パート・ド・ヴェールの硝子も大好きでよく見るという津田さんが、器の裏の仕上げの美しさまでほとほと感心していました。
手塚さん、よかったですね。きっと励まされたことと思います。
と同時に、もっと自分を信じて、器のシリーズを深めたらよいね、とこれは私もまったく同意見でお話ししました。
自分を信じる。
制作において、この肝の座り方は大事ですね。
もちろん、座っていればすべてよし、という単純なことではありませんけれど。
軌道修正はいつでもできます。
でも、やると決めたら一度とことんやってみるのもひとつなのだと思います。
手塚えりかさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、広場側のゲートから入ってすぐ右手。
秋の光をまとって、愛らしい色合いの硝子が輝いていることと思います。
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